ムーヴ思考  ~アクティブラーニングとVUCA時代~

アクティブラーニングが注目されている背景には現在、大学をはじめ教育全体にて行われている教育改革が関わっており、それを理解するには今後社会で必要となってくるスキルを考える必要があります。

AI等のテクノロジーの進化によって今後も社会は大きく変化すると言われています。ただどのように変化していくのかは不明瞭であり、以前よりも不確実性が高く、より複雑に絡まっている様々な状況によって激動の時代が続くと言われています。

その時代を表す用語として『VUCA』という用語が近年使われるケースが増えてきました。

Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとって表されている時代には、今まで通りの方法だけでは通用しないことが増えていきます。

この時代では、常に変わりゆく時代に順応し、自ら考えて、自分たちで課題を発見し、新たな解を創造する力がより求められてきます。

過去の経済成長の主流であった大量生産時代に適応する人材を育てるために作られた教育手法だけでは今後のVUCA時代を乗り越えるためのスキルが身につきません。知識を持っているだけではなく、その知識をどのように活用するのか?またAIなどにも対抗できるように人として多様性の理解や創造性を発揮することが求められます。

このようなスキルが求められる時代だからこそ、教師からの知識を吸い込むだけではなく、それらを材料として、自ら考え、能動的に物事を進める力を育む上でアクティブラーニングが注目を受けています。

 

自ら考えて、物事を自分ごととして能動的に進める授業に取り組んでいる教育現場が世界中で増えています。アクティブラーニングを学校の一部として取り組んでいる学校が多いですが、中にはプロジェクト型学習を学校の中心的な活動として行なっている学校もあります。

例えば、米国のHigh Tech Highでは生徒がプロジェクトを進めて学び、毎年その年に生徒が取り組んだプロジェクトを外部の方も招いて発表会を行なっています。明確なアウトプットに向けて準備を進める生徒は自分のプロジェクトとして責任を持って自ら考え、自分たちのアイデアを発表していきます。社会に実在する環境問題に取り組んだり、ロケットに関して研究を行ったり授業や年度によって多様なプロジェクトに関わっていきます。その過程で生徒はどのような問題が存在するのかを観察し、何が原因なのかを考察し、フィールドワークやリサーチで情報を自ら集めて、自分達のアイデアや解を創造し、それを最終的にアウトプットとして表現していきます。

上記のようなプログラムでVUCA時代でも求められるスキルが身につく効果が期待されています。

アクティブラーニングの効果は上記の力を身につけるだけではなく、生徒の知識の保有や成績にも好影響を与えるという研究結果も発表されています。

ワシントン大学のScott Freeman氏が225個の研究をメタ分析した研究では、アクティブラーニングと従来の受動的な授業の結果を比べたところ、受動的な授業を受けた生徒の方が落第(A-F基準でD以下を取る)する可能性がアクティブラーニング型の授業を受けた生徒よりも55%も高いことが発表されました。また成績においてもアクティブラーニング型の授業を受けた生徒の方が高い成績をおさめていました。

Freeman氏はアクティブラーニングの効果を得るには生徒が主体的に学ぶようにしっかりと設計されている必要があるとも言及しています。世界中で事例が今後も増えていく中で、アクティブラーニングの効果や効果的な指導方法に関しても研究がさらに進むことが期待されています。