ムーヴ思考 ~豊かさと平等~

豊かさと平等は二律背反の関係

多くの上位国では、「経済成長による豊かさ」が事実上の国是になっています。少しくらい国民の経済格差が広がっても、失業者が出ても、国全体が経済成長すれば、豊かに暮らす国民の絶対数が増えます。

一方、かつてシンガポールで優秀な子供を増やすために大卒女性による出産が奨励されたように、上位国の政府は「国民の平等と融和」をあまり重要視していません。

そして、上位国の国民は、こうした政府の国家戦略を支持しています。抑圧的な政治体制に不満はあるようですが、政府の目論見通り国民の暮らしはどんどん豊かになっています。

それに対し日本では、政府も国民も「国民の平等と融和」をまず目指します。「経済成長による豊かさ」は、さほど重要な目標ではありません。極端に言うと「格差がある、ギスギスした豊かな社会より、みんなで仲良く貧乏に暮らす方が良い」と考えています。

しかし、このままの凋落が続けば、日本はいったいどうなるでしょう。いまは過去の蓄積によって何とか生活できていますが、やがて世界からヒト・モノ・金が集まらなくなり、「みんなで仲良く貧乏に暮らす」ことすら難しくなるでしょう。

政府も国民も、1人当たりGDPの推移を直視し、その背後にある「豊かさと平等はトレードオフ(二律背反)の関係にある」という事実にしっかり向き合う必要がありそうです。